第10回「街並みの美学」トラベルスカラシップは、
21大学大学院より38作品の応募をいただきました。
2015年7月2日、小林正美審査委員長のもと、
東京大学芦原研究室OB、スカラシップ入賞者等、
15名の審査員により審査が行われました。
1次選考にて各審査員の推奨により
9作品(003・010・011・012・015・017・021・031・036)が選考され、
2次選考にて4作品(012・021・031・036)に絞り、
下記2名の方を入賞者に決定いたしました。
(敬称略)
021 東琢哉 (京都工芸繊維大学大学院) 021PDF
「畏(かしこ)の坂」に実る -葡萄と自転車を通して自然災害に触れる-
031 園佳美 (東京工業大学大学院) 031PDF
水懐の庭(すいかいのにわ) -水郷佐原における親水公民館の提案-
講評 小林正美審査委員長 (東京大学芦原研究室OB・明治大学教授)
021 東琢哉くんの案は、最近頻発してしる地滑りのような自然災害を大きなテーマとして取り上げ、日ごろの経験として地形と付き合うことで、防災減災の意識をさまざまな人たちに持って欲しいという意図で計画されたものである。場所は大阪の「亀の瀬」と呼ばれる地滑り地帯を設定し、地形に寄り添うように「道の駅」の建物設計が行われている。重いテーマを取りあげているが、建築の断面計画も丁寧に解かれており、建物の中から感じられる風景のシークエンス描写にもセンスが感じられた。ランドスケープ+建築の適度な対話が得られている作品である。
031 園佳美さんの案では、かつて「水郷」として有名であった千葉県佐原の街を取り上げ、川、舟、まち並み、祭りといって日常生活やコミュニティー活動を育むための装置として、新たな公民館の提案を行っている。川をまたいで展開する建物のスケールには多少危なっかしいところも見受けられるが、様々な断面計画、シーンの描写が秀逸であり、知らず知らずのうちに、実現化しそうな錯覚に捉われる。全体に好感のもてる計画であるが、豊富なアイデアがもう少し整理されても良かったかも知れない。
審査風景